「路上生活のはじまり」


村上:どうして「新宿」に?


西村:新宿に行けば、何かあるだろうと思ってね。仕事探すには新宿かな、と。
    知り合いの紹介で 屋台の仕事をすることになって、1年ほど住み込みで
    働いとったんやけど、昼の3時から翌朝の5時、6時まで毎日休みがなくてな。
    そう、土日もないんだよ。休みなし!金も貯まらんしね。
    キツかった。もうキツすぎたね。で、今度は、本当の路上デビュー。
    その頃は、もう自暴自棄になってたよ。

村上:路上というと、駅とか?それとも公園でテントを?

西村:段ボールだね。新宿中央公園で段ボール+寝袋生活のスタートだよ。
    2年くらい新宿におったかなあ。で、35で渋谷方面に移動したんだよ。

村上:私が初めて西村さんに会ったのが2年近く前ですもんね?
    初めて色々お話して下さったのが西村さんでした。

西村:そやなあ。色々話したよなあ。もう2年も前かあ。
    時が経つのも、あっという間やな。今日はもう何でも聞いて!
    隠すことなんて何にもないし。かっこつけても仕方ないやろ。




「家族について」


村上:家族の話とかって聞いたことないかも。西村さん、結婚は?

西村:しとったよー。子供も2人おるし・・。

村上:えー!!西村さん、お子さんがいるんですか??

西村:そうそう、上はもう17だよ。俺、19で結婚したからなぁ。
    最後に会ったのは、そやなあ、何年前やろ。4年前か?5年か・・。
    スキーに連れてったのが最後やなぁ。
    今はボクシングやっとるらしいわ。忙しくしとるみたいやで。


村上:そうですか。そんなに大きなお子さんがいらしたなんてビックリです。
    若い時に結婚されたんですね・・。

西村:そうねえ。成り行きだよ、成り行き!
    友達の紹介で知り合って、そのとき彼女は親とケンカして家出しとってね。
    そのうち俺のところに住むようになってたんだよ。それでやね。

村上:そんな、「成り行き」だなんて・・。書いてもいいんですか?

西村:いいよ いいよー!だって成り行きさー。勢いだよ、結婚なんてものは。
    向こうの親に挨拶行ったのなんて、籍入れる3日前やから。

村上:なるほど。・・それで、離婚された理由は何だったんですか?

西村:ほとんど家に帰らなかったから、というのも大きな理由だと思うけどね。
    とび職の世界っていうのは、皆で飲んだり、遊んだりするのが普通の生活
    なんだよ。建築関係って、皆そうだよ。
    下手したら、家帰らなかったりすることも しょっ中だったしな。
    ほら、俺たちの仕事ってチームワークみたいなとこあるから・・。


村上:奥さんは、もちろん不平を言いますよね?

西村:そやなぁ・・もう大変だったよ。
    子供の面倒見ろ、どこか連れてけ、とか・・。もう挙げられへんくらい
    色々言われたなあ。ここで言ってたらキリないくらい!
    帰るたびに 文句ばっかり言われてたねー。
    確かに悪いな、と思ったけど、でも無理、できない、みたいな・・。


村上:今、家族には会いたいと思わないですか?

西村:子供には会いたいね。
    親は阪神大震災で死んでしまって、もういないから会えへんしなあ・・。
    家の下敷きになって死んでしまったんよ。
    あの頃は、まだ離婚もしてなくて、俺も一緒の家で暮らしてたんだけど、
    俺たちは3階、親は1階に住んでてね・・。
    まだ家も建てたばっかりやったんやけどな。そりゃあ悲しかった。
    あと、兄弟は皆、バラバラ。仲悪いから、ちっとも会いたいと思わんね。
    1こ上の兄貴だけは連絡とってるけど、あとはどうしてるかも知らん。
    でも、やっぱり子供には会いたいなあ・・・。
































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