3月12日(土曜日)         「新宿の様子」


     
新宿に行ってきました。
     昨日の日記に書きましたが、421人のホームレスの方が
     路上生活→アパート生活できるようになった、ということも
     あり、その変化が目に見えて分かるほどのものなのか、
     新宿中央公園に行ってみることにしました。
     (この支援事業は、新宿では、
     新宿中央公園&戸山公園、この2つの公園が対象)

     テントが相当減ったのだろうか?
     そんな想像をしながら公園内を歩いてみましたが、
     そこまでの変化を感じとることはできませんでした。
     少し減ったような気はする・・そんな感想です。

     私にとっては、数回しか足を運んだことがない公園なので、
     飽くまでも個人的な印象の話ではありますが、
     そこには、まだまだ沢山のテントが存在していました。

     帰り道、路上でBIG ISSUEを販売しているベンダーの
     おじさんに 新宿の変化について聞いてみました。
     おじさんによると、30〜40人減った、という感じはする、
     といった印象だそうです。
     「3000円のアパートどうですか?」、聞いてみると、
     「今度、代々木公園の面接を受けようと思ってます。5月に。」
     そんなお返事が返ってきました。

     「でも、(雑誌が)なかなか売れなくて・・」
     心配そうにおじさんがおっしゃいます。
     新宿を歩いてみると、本当にあらゆるところにホームレスの
     方がいらっしゃいます。公園のみならず、駅や路上で寝泊り
     している方々や、3000円と言えど、アパートに入居するのは
     難しい、そんな方も多くいることを忘れてはなりません。


            

      *BIG ISSUE23号*
        特集は 「ホームレス、その人々の今」です。


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     <追記>

     新宿駅(西口)から都庁に向かう道のり、
     ホームレスの人が休んだり、段ボールで寝泊りしたりできない
     よう、このような対策が施されています。


            



            







    
 3月11日(金曜日) 「東京都内の路上生活者数(都発表)」


     
東京都が「平成17年 路上生活者数概数調査の結果を
     発表しました。(→詳しくはこちら*東京都HP*

     それによると、23区の路上生活者は、4年ぶりに5000人を
     大きく下回り、対前年比746人減の4619人となったそうです。

     なぜそこまで減少したか?というと、
     昨年6月から新宿区内の2公園で開始した
     「地域生活移行支援事業」により、400人を超える
     路上生活者がアパートへ移行した成果も大きいとのこと。

     新宿中央公園、戸山公園の2つの公園のホームレスの
     方々計421人が東京都が借り上げたアパートに入居した
     そうです。(→詳しくはこちら*東京都HP*

     ホームレス人口の数え方ですが、東京都の調査方法には
     限りがある(たとえば、調査した時間が昼間である、
     ということや、1日だけの調査である、という点)ことからして、
     私が想像するに、実質的な人数は、
     発表されたものよりも かなり多いものだと思います。
     (日中は、日雇い仕事など、働いている人も多く
     いらっしゃいます)

     ただ、これだけ多くのホームレスの方がアパートに
     入ることができたという事実には、一先ず驚きです。

     ”公園からホームレスの人を追い出すための対策に過ぎない
     のではないか?”
     ”なぜ、公園にいる人しか対象にしないのか?”
     という疑念や心配の声、
     ”3000円で入ることができるアパートがあるなんてうれしい・・”
     ”非常にいいことだ”etc・・といった賛成の声、
     支援者のみならず、当事者の間でも賛否両論、
     色んな声があったこの事業・・
     今だけではなく、入居されている方が、これからも継続して
     アパート生活を送ることができるよう期待したいものです。

     3000円で住むことができるのは、基本的に2年間・・
     「自立」の道へ辿り着くことができるのか、
     これから先が、本当の意味で注目です。






     3月9日(水曜日)    「あるコメンテーターの発言」



     
「ふざけんな」
     2月23日の朝・・・
     テレビに向かって 思わず心の中でそう呟いている
     自分がいました。

     たまたまつけていたテレビの朝の情報番組で、
     信じられない発言をするコメンテーターがいたのです。

     番組では、あるホームレスのおじさんが飼っている
     「うさぎ」について取り上げていました。

     それは、”荒川河川敷で生活しているホームレスの沖本さん
     という男性が飼っている「うさぎ」が繁殖して問題となっている”
     という背景をもとに、国土交通省が柵を作ることになった
     模様を映しているものだったのですが、
     その中で、近所に住む女性が、差し入れに・・と
     沖本さんにおにぎりを持ってきた映像が流れました。

     その女性は、インタビューで「おじさんがやさしそうだから」
     と、おにぎりを持ってきた理由をお答えになっていました。

     VTRは、主に、行政側と沖本さんの言葉のやりとり、
     柵を作る模様やうさぎを映しているものだったのですが、
     VTRが終わったあと、ニュースを解説する出演者の男性が
     こんなコメントをしたのです。

     「おばちゃんは、おじさんに”餌”を持ってっちゃいけないよ。
     おじさんに餌持っていったら、別の問題が発生しちゃう。
     今度はおじさんが”繁殖”しちゃうから・・。」

     ・・・そんなふうに言ったのです。
     大人が、仮にも、ニュースの解説をする人間が、です。

     公共の電波にのせてコメントする言葉がそれなの?
     そんなことしか言えないの?
     一体なんのためにニュースのコメントをしているの?
     正直、そこまで思いました。

     色んな人がいて、色んな気持ちがある。
     だから、そんなことを思う人だっている・・
     分かっているつもりですが、ひどく腹が立ちました。
     それは、その人がテレビで話している人だから尚更
     なのだと思います。

     コメントした男性の良識の問題のみならず、
     メディアを通じてそのような発言をする、というのは
     とても危険なことです。
     まだ分別のつかない小さな子供が見ていたら?
     少なからず、この発言が頭にインプットされて、
     ホームレスの人=人間扱いしなくてもいい人たちなんだ・・
     こんな風に思う子もでてくるかもしれないですよね。

     実は、今日の今日まで、このことを日記に書くべきか、
     私自身、迷っていました。いちいち腹を立てていても
     キリがないですし、何しろ、人のことを批判することは、
     決して気持ちのいいものではありません・・。

     今日の日記で私が一番伝えたいこと、それは、
     このコメンテーターの批判などではなく、
     (勿論、そのことも知ってはほしいのですが)
     何か高尚なメッセージのようなもの、なんかでもなく、
     その時の、私の、ただただ ”ふざけんな” という
     憤りの気持ちなのかもしれません。
     敢えて、当たり前の感想を書かせて頂きました。

     さて、とは言え、話はそれだけで終わる訳にもいきません。
     このうさぎ問題、
     他にも論じなきゃいけない事があるのではないでしょうか。
     沖本さんご自身も謝罪していらっしゃるように、
     うさぎが繁殖したことで迷惑をかけてしまった、ということも
     事実です。しかし、なぜこのようなことになってしまったのか?
     ということも考えてみる必要があるように思います。

     沖本さんのケースは定かではありませんが、
     ホームレスの方々が公園などで飼っているペットたちは
     捨てられたペットたち、ということも多いのです。

     以前の日記(2004/8/12分)で、公園のペットたちについて
     少し取り上げたことがあります。
     今回のうさぎ問題についての新聞記事と併せて、
     その日の日記も読んでみてください。
     皆さん、どう思いますか?ご意見聞かせてください。


     <背景となる記事>
     墨田区の荒川河川敷で、ホームレス男性が飼っている
     ウサギが大量に繁殖している。ウサギは自由に駆け回り、
     堤防に穴を掘ったり、ふんをしたり。
     堤防を管理する国土交通省荒川下流河川事務所(北区)は、
     放置すれば「雨などで堤防の土が崩れる恐れも出てくる」
     と指摘。だが、むげに追い出すわけにもいかず、
     22日から、男性の仮設小屋の周りからウサギが出ないように、
     さくを設ける工事を始める。

     ウサギが繁殖しているのは、東武堀切駅からほど近い
     荒川河川敷。ウサギは同事務所によると70匹ほど。
     飼い主は沖元智加男さん(57)。
     「こんなに増えるとは思わなかった」と困惑する。
     以前は都内のアパートに暮らしていたがバブル崩壊後、
     日雇いの仕事が減り、7年ほど前にホームレスとなった。
     2年ほど前、今の場所に移り住み、
     知人からアナウサギ7匹をもらって、飼い始めたという。
     ウサギはみるみる増え、昨夏には30匹を超えた。
     小屋の周りに手製のさくをつくって飼っていたが、
     台風で壊れると、辺りを自由に動き回るようになった。
     夜には、堤防の芝生に穴を掘り、フンをする。

     えさ代も膨れあがった。1日に、飼料5キロ(920円)や
     ニンジンなどを与えている。
     週に2、3日する日雇いの仕事で得る収入も、
     6割はえさ代に消えるという。
     それでも「独り身の自分には家族同然」。
     パンなどを持って、やってくる近隣住民もいる。
     
     同事務所は「ウサギを敷地内から出さない」など改善を求め、
     15日に警告板を設置した。
     さらに話し合いの上、沖元さんの小屋の周辺に間口10メートル、
     奥行き8メートルの木製のさくを設けることにした。
     担当者は「国交省としてはあくまで河川敷の管理が
     本来業務で動物は専門外。
     関係機関の協力をあおぎ今後を考えたい」という。
     一方、区保健所は「国交省と協力しながら、
     区としても指導していきたい」としている。

     沖元さんは「迷惑をかけて申し訳ない。せめて一人でも多く、
     もらい受けてくれる人がいれば」と話している。
     (2/19朝日新聞)

     




     
   
  2005年2月12日(土曜日)     「久々の再会」



            


     みっちゃん(インタビュー・第5回ゲスト)に会いました。
     何度か会いに行ってみてはいたのですが、
     なかなか会うことができず、約5ヶ月ぶりの再会です。

     私の姿を発見するや否や、
     「何してたの〜?どこ行ってたのよ〜!!!」
     みっちゃんは、大きな声で出迎えてくれました。

     私:「何度か会いに来たんだよー!でも、みっちゃん
        いないんだもん!!」
     み:「いつ?ねえ、いつ?いつ来たの?」
     私:「去年の台風の時も心配で見に来たんだよ。
        それから何度か様子を見に来たけど、
        いつも留守だったよ。元気にしてた?」
     み:「大丈夫。元気、元気。ちゃんと仕事もしてるよ。」
     私:「よかったあ。元気だったんだね。」

     立ち話をしているうちに、みっちゃんが飲み物を
     ご馳走してくれるといいます・・。
     「ええっ?いいの?でも、いいよ、私が買うからね。」
     私がそういうと、みっちゃん、どうしてもジュースをおごる、
     と言ってくれます。
     「頑張って仕事してるからおごる!私が払う!!」
     ・・と、どうしても譲らないのです。

     「じゃあ、ご馳走になります!ありがとう、みっちゃん!」
     お茶をご馳走になりました。

     み:「ごめんね。お茶だけしかおごれなくて・・。
        お茶だけでごめんなさい。」
     何度もみっちゃんが言います。

     私:「ありがとう。充分だよ、みっちゃん。おいしいね。」
     み:「今度はおいしい物ごちそうする。」
     私:「いいよ、いいよ。もういいから自分の物買わなきゃ。」
     み:「欲しいものないから。今度スパゲッティー食べに
        行こうよ!私おごる!おごります!」
     私:「じゃあ今日おごってもらったから、今度は私がおごる!」
     み:「いいの!いいの!私がおごる!おごります!」
     こんな会話がずーっと続きます。

     結局、この話は埒が明かず、お互い近況を報告し合ったり、
     みっちゃんがラジオのニュースで知った、という話など、
     世間話をしてお別れしました。

     「困ってることはない?」
     「ないない、大丈夫。また会おうね。」
     いつも最後は、こんな感じです。


              

              

              


     久々に会ったみっちゃんは、いつものみっちゃんでした。
     いつものみっちゃんでよかった、と思うと同時に、
     何も状況が変わらない、という現実に、
     歯痒い気持ちでいっぱいです。


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     さて、代々木公園を歩いてみても、
     その状況は、さほど変わらないようです。

     去年10月、強制撤去されたテント跡地は、相変わらず
     バリケードで囲まれたまま、「立ち入り禁止」状態。

     同じ公園の中、休日を楽しむ大勢の人々の
     姿の陰には、300以上ものテントが張られ、
     たくさんのホームレスの方々が生活しています。


            






     
    
 2005年1月30日(日曜日)     「ホームレス作家」



            



     
「ホームレス作家」 (松井計・幻冬舎アウトロー文庫)
     を読みました。


     
まず一言、  『 衝撃的によかった 』  です。

     この本は、ある作家が ホームレス生活を余儀なくされる
     ことになり、その体験をまとめた実録書なのですが、
     その声は 驚くほど生々しく、悔しさ、切なさ、悲しみ、
     やりきれない気持ちetc...が、ずっしりと伝わってきます。
     これほどまでに 生きた声が見事に表現されたものは
     なかなかないのではないかと思います。
     少なくとも、私が読んできたホームレス体験記の中で、
     これほど心打たれるものはありませんでした。

     飽くまでも 筆者の目を通して見た世界ではありますが、
     路上生活を通して見えてくる世界とはこんなものなのだ、
     ということ、また、人にとって最も辛いことは何なのか?
     ということについて、思い知らされるような一冊でした。

     筆者が 「あとがき」 でこんな風におっしゃっています。
     「私の半年近くの彷徨の日々、最も苦しかったのは、
     空腹や寒さ、不眠、夏の日のすぐにべたついて汗臭くなる体、
     などではなかった。路上での生活を余儀なくされていると、
     人に迷惑をかけながらでないと生きていけなくなってしまう。
     それが一番、辛かった。」・・と。

     その詳しい内容は、ぜひ実際に読んで触れてみて下さい。

     人としての尊厳とは?
     家族、友人、人間関係、社会・・。路上生活を通して、
     多くのテーマについて考えさせられる貴重な作品です。
     ホームレス問題に関心がある人は勿論、そうでもないという
     人にもお勧めしたい本です。




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