「親には連絡できない」


M)例えば、親に連絡して助けてもらう、とか、
  そうなる前に何か別の方法はなかったですか?

S)親には連絡できないです。原因に親の借金、というのもありましたし、
 路上に出た、なんて言えないです。
 かえって心配かけるだけですし・・。
 友達とか、探せば誰かはいたのかもしれないですけど、
 俺の場合は、もう遅かったです。
 落ちるとこまで落ちて、さすがにここまできて、誰かに助けを求める、とか
 ”路上してる”、とまでは言えない、と思いましたね。

M)でも、実家はある訳ですよね?
 仕事がなくても、屋根はある・・。


S)いやぁ、でも、帰っても親もお金に困ってるの知ってるし、そこに
 そんな状態で、どのみち帰れないと思ったんですよ。

 もう、ここ何年かの間、家には連絡もしてないです。
 もちろん、親は、俺が路上生活してたなんて思っていないですよ。
 福祉から「生活保護」の件で連絡がいってるので、生保を受けてるの
 は知ってると思いますけど・・。

M)まさか、野宿しているとは思っていらっしゃらない・・。


S)そうですね。思ってないと思います。
 親だけじゃなく、地元の友達にしても、まさか俺が野宿してたなんて、
 絶対思ってないはずですよ。

M)そうですか・・。

S)ただ、”まさか野宿なんて・・”とか、”探せば仕事くらいあるじゃん”、
 ”なんであいつ働かないの?”
 って、ふつうに仕事がある人は思うかもしれないですけど、
 昔とは違って、今はそんなんじゃないと思いますよ。
 だから、村上さんのホームページを見てる人も、
 自分はそうはならない、と思ってても、何かのきっかけで落ちる
 可能性もあると思います。
 失業保険だなんだ、って言っても、1年くらい何も見付からなければ、
 もうダメじゃないですか?頼る人がいなければ。

M)つまり、頼る人がいないという状況・・親子関係とか、
  そういう繋がりが希薄だったりする、というのが大きいんですね。


S)そうですね。それはあると思います。
 親が生きてたって、親子関係がうまくいってなければ無理ですし、
 頼りたくても、親も大変な状況な場合は無理ですよね。
 あとは、頼る、ということが嫌な人もいっぱいいると思います。
 プライドが高くて・・とか。


 
「路上生活を振り返って」


M)路上に出て、最初どんな風に思いましたか?


S)最初は気楽でしたよ。変な自由がありましたね。
 変な目では見られるんですけど、今日仕事行かなきゃ、とか、
 何時に寝て、何時に起きなきゃ、とかもないですし。

M)いきなり外で眠れました?

S)まあ、やっぱり変に眠れなかったり、変な時間に目が覚めたり、
 それはありましたけどね。路上に出る前よりはいい、と思いました。

M)ホームレス生活をしばらくしてから、気持ちは変わりましたか?

S)路上生活しながら、支援団体の人や仲間とか、色んな人に出会って、
 考え方が色々変わってきました。
 俺は、なんて自分勝手なお子ちゃまだったんだろう、って・・。
 入院した時なんかは、本当に色々考えました。


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